2021.6.20
珍しくサチが朝ご飯になっても出てこなかった。一部屋ずつ声をかけてもいない。「お隣の庭にいるぞ!」と夫が叫んで慌ただしく仕事に出かけた。
寝起きの私がゆっくりと近くに寄り腕を伸ばすと簡単に捕獲できた。プチ脱走は何度かあったけど、まるまる一夜を外で過ごしたのは初めての経験だった。
9歳のサチ、生まれて初めての夜通しの大冒険。
今日は父が畑のジャガイモを持ってきてくれる日。ちょうど〝父の日〟なので、昼ごはんをごちそうしようと思い、食べたいものをリクエストしたら「カツカレーかカツ丼」という予想外な返答。
体力がなくなったとか、仕事をやめたとか歳を感じることが多かったけど食欲旺盛なリクエストで驚いた。
かぼちゃとサツマイモの甘いカレーを朝から作って待つ。
娘たちは平日よりも早い6時半に起きて、ずっとシルバニアで遊んでて楽しそう。
朝食の後に最近観始めている「半分、青い」を3人で観る。
今日の回で小学3年生だった鈴愛ちゃんがいきなり高校3年生になった。
熱心にドラマの世界に浸る。
久しぶりに会う父はさらにおじいちゃんになっていた。歩くスピードが前回よりもゆっくりしている。
カツカレーを下を向いたまま黙々と一言も喋らずに食べて、おかわりもした。
食べ終わりようやく「ごちそうさま」と言って笑って、次女が「じいちゃんが笑った」と言った。
「ずっと笑いながら食べてたつもりだったよ」と父は言って、
「今初めて笑ったよ」と娘たちが言った。
歳をとり、老け込む父の姿に娘の私は切なくなるけど、娘たちの方が老いや変化を柔軟に受け止めているような気がする。
食後のコーヒーを飲みながら、父と母は自分たちが亡くなった後の法事を頼む寺のこととかお墓の話を私に話した。墓を建てずに地元で合同葬にするらしい。近所の◯◯さんも◉◉さんも一緒よと母は笑って言った。
本来なら入るはずだった父方の墓は博多の生家からもだいぶ遠い不便な場所にあって、私たちや孫たちのことを考えての合同葬という形だけれど、やはりこういう話は胸が締め付けられる。
夕方には長姉家族が父の日のお祝いをしに来てくれるから、とふたりは帰って行った。
ふたりを見送ると、娘たちは一目散に二階に駆け上がり、楽しそうにシルバニアの続きを始めた。